63 あぼへぼ(粟穂、稗穂)

63 あぼへぼ(粟穂、稗穂)

 昔は、どこの農家でも、こく物の豊作を願って小正月に、あぼへぼの行事をしました。
 ナタやカマを使って、背丈位の青竹の先を九本にわり、よくしなう様にするため火であぶり、三本づつ組みます。その先に十センチメートル位に切った、にわとこ、かつんぼう(かつの木)、松などの木で穂や花を作りさします。

 のう天(頂点)には、葉のついた小竹をさし、にわとこの木で作った花を三本さし、一年分計十二本飾りつけます。
 きれいに飾った竹を、庭先の堆肥の山にさし、水と米をお供えして、一年分の豊作をお願いしました。
 にわとこは黄色いので粟、かつんぼうは黒いので稗、皮をむいた松は白いので米を表わすそうです。
 十センチメートル位に切ったこの三本の木を、わらでくくり俵に見たて、家の中の大神宮様、荒神様にもお供えして豊作を願いました。

 「子供のころは、ずい分ひえがゆなんか食ったもんだ、近所中でこれを立てていたんだが、いつごろやめてしまったのかな―」こう話して下さったのは、芋窪の木村音八さんでした。
(東大和のよもやまばなしp139~140)